GENIAC

イベントレポート

2026/08/06

2026年7月16日、ザ・プリンス パークタワー東京において「我が国のフィジカルAI政策に関する対外発信イベント」が開催されました。

本イベントは、フィジカルAIの実現に向けた我が国の取組を国内外へ発信するとともに、フィジカルAIにかかわる事業者、大学・研究機関、行政関係者との連携促進を目的として実施されたものです。当日は、AIロボット・フィジカルAIの開発基盤となる国産マルチモーダル基盤モデルの開発プロジェクトである「FRONTia (フロンティア) 」が目指す国産マルチモーダル基盤モデルの構想や研究開発の方向性に加え、日本政府が推進するAI政策の全体像、国内外のAI研究者からのメッセージ、採択事業者による取組紹介が行われました。

イベントでは、FRONTiaの採択事業者であるNoetra株式会社および国立研究開発法人産業技術総合研究所を始め、連携事業であるGENIAC等の採択事業者が一堂に会し、日本発のフィジカルAI基盤の実現と産業競争力の強化に向けた展望が共有されました。

フィジカルAIの実現に向けた期待と展望

イベント冒頭では、高市早苗 内閣総理大臣よりビデオメッセージが寄せられました。

高市総理は、
「フィジカルAIは、情報通信、防衛産業、航空・宇宙など、ロボットを導入する製造分野の高度化に不可欠であるとともに、製造、物流、インフラなど日本の強みのある「産業現場」に蓄積された重要データが競争力の源泉となる、日本の勝ち筋となる技術分野です。ものづくりの文化、精密さへの情熱、品質への誇り、こうした日本の「現場力」の強みを土台として、日本の叡智を結集し、世界の知性ともつながりながら、「信頼されるAI」を日本から生み出すことが重要です。」
「高市内閣は『日本成長戦略』を掲げ、戦略17分野の『官民投資ロードマップ』に基づき、戦略的な国内投資を加速させていきます。フィジカルAIについては、2040年度までに、半導体を含め80兆円の官民投資を想定しており、その第一歩が、フィジカルAIの開発基盤の構築を目指して本日より開始する『FRONTiaプロジェクト』です。」
「国内でのAI開発において海外製への依存が課題となっている中、フィジカルAIにおいて、「国産モデル」の開発基盤が構築されることを大変心強く感じています。信頼できるフィジカルAIをここ日本で生み出し、世界に打って出る。『FRONTiaプロジェクト』を「日本再起」の旗印としてまいりましょう。」
と述べました。

動画はこちら (リンク先: 官邸HP)

続いて、赤澤亮正 経済産業大臣が登壇しました。

赤澤大臣は、「ビッグデータ×AI」の時代のいま、様々な分野でAIトランスフォーメーション、AXを進めるカギは現場データであります。我が国の勝ち筋は超高齢社会かつ災害大国であるところにある。高齢者、そして災害がどの国より多く、そこにビッグデータがある。ピンチのように見えてそこが勝ち筋だということを繰り返し申し上げてきました。」
「福島第一原発の事故を経験した我々は世界にたった1つの廃炉の現場というものも持っています。極端に過酷な状況、高い線量の中でセンサーやカメラが動くようにすり合わせる。そこで働くフィジカルAIのデータを蓄積する。あるいは日本には世界一の製造業の現場がある。高齢者のヘルスケア、災害対応、製造現場の人手不足を補う取組、福島第一原発の廃炉。こうした社会課題を、それぞれの現場データや、実世界で作用するフィジカルAIを活用して解決していくことが重要であり、我が国の経済成長の大きな駆動力になってくれると思います。」
「Noetra社と産業技術総合研究所のコンソーシアムに結集した、日本と世界の優れたエンジニアたちによる、新たな挑戦が始まります。本プロジェクトを担うエンジニアの皆様が、思う存分、力を発揮していただくことを心から期待しています。最先端技術やニーズを学び合い、困難な課題に挑戦し、人とAIが共生する世界のフロンティアを切り拓く。そうした熱い思い、情熱を持った多様な人材が、今後さらに参画いただくことを心から歓迎します。」
と述べました。

NVIDIA 創業者/CEO ジェンスン・フアン氏による特別講演

続いて、 NVIDIA創業者/CEOのジェンスン・フアン氏による特別講演が行われました。

フアン氏は、AIが次の産業革命をけん引する重要な技術であると述べるとともに、日本が長年培ってきた製造技術やロボティクス分野の競争力に高い期待を示しました。また、フィジカルAIの実現に向けて産業界と研究機関が連携して取り組む意義について言及し、今後の発展への期待を語りました。

日本の産業知見について、「日本の国家的な知性であり、国の財産です。『匠』、『改善』、『かんばん』、『現場』と日本は何世代にもわたり産業知識を生活の一部として築いてきました。その知見を失ってはなりません。」と強調しました。その上で、「日本は国家的な知性を外部に委ねるべきではなく、日本自身が『Japan AI』を構築し、発展させ、守り、展開していく必要があります。フィジカルAIは次の産業革命の基盤であり、その未来は日本で築かれるべきです。」と日本独自のAI基盤構築の重要性を述べました。また、日本初の国家AIインフラ向けに設計された、初のフルスタックAIプラットフォームをNVIDIAより提供することも述べ、日本独自の基盤システムを支えていく考えを示しました。最後に「日本の産業知見は『Japan AI』へと進化します。そして次の産業革命は、ここ日本から始まります。」と締めくくり、日本発のAI基盤構築に強い期待を示しました。

世界的AI研究者から寄せられた期待

さらに、人工知能戦略専門調査会座長で東京大学教授の松尾豊氏が登壇したほか、チューリング賞受賞者であり世界的なAI研究者であるヤン・ルカン氏、ヨシュア・ベンジオ氏からビデオメッセージが寄せられました。お三方とも、フィジカルAIが切り拓く産業の未来や日本が強みを持つ製造業・ロボティクス領域における大きな可能性、FRONTiaプロジェクトの成功への期待を述べました。

人工知能戦略専門調査会 座長/東京大学教授 松尾 豊 氏

松尾氏は、生成AIの登場以降、日本においてGPUの拡充や開発人材の育成、AI関連制度の整備などが着実に進められてきた一方で、世界の最先端モデルとの競争という観点では依然として厳しい状況にあるとの認識を示しました。

その上で、フィジカルAIについて「労働力不足という課題を抱える日本にとって極めて重要なテーマ」であると述べるとともに、ロボット産業や製造業といった日本の強みを生かせる領域であり、「まさに負けられない戦い」であると強調しました。

AMI Labs共同創業者/ニューヨーク大学教授 ヤン・ルカン氏

ルカン氏は、AIの次なる大きな挑戦としてフィジカルAIの重要性を強調しました。また、日本が有する製造技術、産業用ロボット、エンジニアリング分野の強みは世界をリードする可能性を秘めていると述べ、日本の取組が世界へ向けた重要なメッセージになるとの期待を示しました。

LawZero創設者/Mila創設者・科学アドバイザー ヨシュア・ベンジオ氏

ベンジオ氏は、安全で信頼できるAI開発の重要性について言及し、日本がロボティクスや製造業の強みを活かしてフィジカルAI分野の研究開発をリードできる立場にあると述べました。また、国際的な連携を通じた技術発展への期待を語りました。

FRONTiaが目指すフィジカルAIエコシステム

続いて、経済産業省 商務情報政策局長 野原諭より、これまでのGENIACの成果と、それを発展させるFRONTiaの位置づけについて説明が行われました。

野原局長は、我々が目指すAIを活用した産業変革 (AX: AI Transformation) の全体像と、その鍵となる「フィジカルAIエコシステム」について述べました。続いて、本FRONTiaプロジェクトの名称に込めた思い、プロジェクトの全体構造について説明した上で、学習データに関する連携企業や先端的な研究開発における海外の連携先等についても紹介しました。最後に、本FRONTiaプロジェクトを含むAIロボットの社会実装に向けた政策の全体像を説明し、2040年に1000万台のAIロボットを国内導入するという目標の実現に向けた展望を述べました。

資料ダウンロードはこちら

NEDOによるクロージングメッセージ

イベントの最後には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 理事長 斎藤保が登壇しました。

斎藤氏は、日本の生成AI開発を取り巻く環境について、「これまで日本は米国や中国などのAI先進国に後れを取っていたものの、この2年間で計算資源や開発環境の整備、人材育成、技術力向上に加え、データセット構築や社会実装も着実に進展してきた。」と説明しました。その上で、「点と点がつながり、政策は次のステージへ進む段階にある。今こそフィジカルAIの実現に向けて挑戦を加速させる時期だ。」と述べました。

また、GENIACとFRONTiaの成功の鍵について、「日本の国力を結集すること、そして海外の研究機関や企業との連携を進めることにある。」と強調しました。今後もNEDOとして、産学官の多様なプレイヤーをつなぐ“扇のかなめ”としての役割を果たしながら、プロジェクト目標の達成と成果創出、さらには事業者間連携の推進を力強く後押ししていく考えを示しました。

GENIACの紹介

会場では、データAI-Ready化事業、データエコシステム構築事業、基盤モデル開発事業のパネル展示を実施しました。各パネルには多くの来場者が足を止め、事業内容や取り組みに高い関心が寄せられました。また、パネル前では来場者と関係者による活発な意見交換が随所で行われ、今後のAI活用や連携の可能性について議論が交わされるなど、終始活気あふれる交流の場となりました。


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