
2026/04/02
2026年3月27日(金)、東京ポートシティ竹芝において、GENIACで生成AI基盤モデル開発の支援事業 第3期に採択された24事業者およびデータ・生成AI利活用実証 第1公募に採択された3事業者による、成果報告会を開催しました。第1部では、採択事業者による開発・実証およびビジネスの進捗や成果を発表。あわせて、データ・生成AI利活用実証の第3期公募に採択された事業者による事業概要の紹介がありました。第2部では高度なモデルや社会実装などを評価する表彰式が催されました。イベント当日の模様をご紹介します。
【第1部】GENIAC基盤モデル開発事業 第3期採択事業者による成果報告
はじめに、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 AI産業戦略室 室長 渡辺 琢也が、GENIACについて「AIの開発と利活用を好循環させていく」ためのプログラムだと説明。AIの性能向上には、新たな学習手法やデータ活用による開発側の取り組みだけでなく、利活用側が「今のAIの能力を見極めて業務プロセスを再設計していく」ことも欠かせないと述べます。
あわせて、現場に蓄積されたノウハウや未整理の情報を「AIレディ化し、さらにAI化していく営み」が重要だと強調。GENIACでは基盤モデルの開発支援に加え、組織を超えたデータ流通の支援、コミュニティ活動、懸賞金コンテストなどを通じて、開発者と利用者の接点を支えていくとしています。
さらに今後は、ロボット基盤モデルの開発支援や、フィジカルAIを重視したAIロボティクス戦略も進める方針を示しました。日本の強みである現場データや「擦り合わせ」の力が生きる領域に注力し、社会実装を加速していく考えです。
次に、競争力ある生成AI基盤モデルの開発事業 第3期の採択事業者24社が達成した成果について発表しました。
<競争力ある生成AI基盤モデルの開発事業採択事業者 第3期>
- Turing株式会社
- Degas株式会社
- Zen Intelligence株式会社
- ONESTRUCTION株式会社
- 株式会社野村総合研究所
- 株式会社ABEJA
- Nishika株式会社
- 株式会社リコー
- Sansan株式会社
- 楽天グループ株式会社
- Direava株式会社
- 株式会社プレシジョン
- アリヴェクシス株式会社
- SyntheticGestalt株式会社
- 株式会社AIdeaLab
- カラクリ株式会社
- AI inside 株式会社
- NABLAS株式会社
- インフィニマインド株式会社
- 株式会社Kotoba Technologies Japan
- 株式会社NexaScience
- Airion株式会社
- ストックマーク株式会社
- 株式会社Preferred Networks
Turing株式会社
Turing株式会社 CTO 山口 祐氏は、GENIAC第3期の成果として、自動運転の基盤モデルを現実世界の車両に適合させる「車載可能なフィジカル基盤モデル」を発表しました。視覚・言語・行動を統合したVLA(Vision-Language-Action)モデル「Heron」を車載計算機上で10Hz以下のリアルタイム推論で動作させ、「15分以上の無介入走行」を実現。あわせて、複雑な運転判断を学習するデータセット「RACER」や画像圧縮トークナイザ「Drive-TiTok」も整備し、2030年のEnd-to-End自動運転システムの提供を見据えています。
Degas株式会社
Degas株式会社は、近赤外を含む多波長の衛星データを自然言語で扱えるVLM(視覚言語モデル)の開発に取り組みました。シニアMLサイエンティストの林 延氏は、その意義を「専門家による衛星データの解釈を、言語AIで誰でも扱える形にすること」と説明します。また、農業・環境モニタリング系タスクで「IBMのEarthDialやOpenAIのGPT-4oを上回る性能」を達成したと報告しました。今後は国連との実証や、アフリカ向け農業保険、気候変動リスク分析への統合を進め、社会実装につなげていく計画です。
Zen Intelligence株式会社
Zen Intelligence株式会社 代表 野﨑 大幹氏は、建設現場の施工管理を支える建設特化型VLMの開発成果を発表しました。「安全管理、品質管理、工程管理の7〜8割は目視で行われている」と現場の実態を示し、汎用AIでは難しい建設現場の文脈理解に挑戦しました。「カメラを持って歩くだけで、建設現場の安全・品質・工程を自動で認識・判断・指示」し、人手不足の中でも「経験が少ない監督や職人でも高い品質で作業できる」フィジカルAIエージェントの実現を目指しています。
ONESTRUCTION株式会社
ONESTRUCTION株式会社 日高 洸陽氏は、「BIM(Building Information Modeling)は単なる3DCGではなく、材質やコスト、性能といった属性情報をひも付けられる設計データ」と説明。同社は、BIMの属性情報を確認するための技術「IDS(Information Delivery Specifications)」を自動生成する基盤モデル「Ishigaki-IDS」を開発し、汎用フロンティアモデルでは対応が困難な専門タスクでフロンティアモデルに匹敵あるいは上回る高い性能を実現したとしています。
BIMの国際標準化団体の日本支部であるbuildingSMART Japanにおける実証テストでは、「木材建物の炭素貯蔵量計算やエネルギー計算のために必要な属性情報の確認作業」というワークロードにおいて、手作業と比べて平均55.53%の時間削減を確認。今後は図面などから3DモデルやBIMデータを一貫して生成する技術へ対象を広げ、建設データをAIが使える形に変えるAI Ready化から、AIを当たり前に組み込んだ業務フローとなるAI Poweredまで、建設業界のAIの実装を加速させていきます。
株式会社野村総合研究所
株式会社野村総合研究所 チーフエキスパート 岡田 智靖氏は、中規模オープン大規模言語モデル(LLM)を基盤に金融業界向けの特化型LLMを開発し、高精度かつ効率的に構築する手法を確立したと報告しました。証券・保険の実務タスクで実証を進め、「GPT-5.2を上回る精度を達成」したほか、営業会話のコンプライアンスチェックでは、従来は約5%にとどまっていた確認対象を「100%カバーできるようになった」と説明。今後は録音音声のチェック業務への導入やAIエージェントへの組み込みなど、金融以外の業界への展開も視野に入れています。
株式会社ABEJA
株式会社ABEJA 生田 岳氏は、企業の中核であるミッションクリティカル業務へのAI導入を見据え、「ローカルで動作すること、ロングコンテキストに対応すること、プランニングやツールユースが可能であること」が重要だと説明しました。その上で、長文対応の汎用ローカルエージェント基盤を開発し、日本語処理性能と長文処理性能の両面で汎用モデルを上回る成果を示しています。実証では損害保険分野での活用可能性が検証され、「人とAIが協調し、難易度の高い業務を担っていくことができる」との展望を語りました。
Nishika株式会社
Nishika株式会社では、オンプレミス環境で動作する議事録サービス「SecureMemo」を展開しています。代表取締役 CTO 松田 裕之氏は、「要約というタスクに特化すれば精度が出せる」との考えの下、会議要約で求められる形式遵守に強いSLM(Small Language Model)を開発しました。「担当者不明」「です・ます調」「200字以内」といった細かな指示への追従性能を高め、日本語会議要約ベンチマークでも大幅な改善を確認しています。今後は「SecureMemoにGENIACで開発したSLMを搭載し、社会実装を進めたい」としています。
株式会社リコー
株式会社リコー 長谷川 史裕氏は、図表を多く含む社内文書からQ&A形式で知識を引き出せるマルチモーダルのLLM(LMM=Large Multimodal Model)の開発成果を報告しました。「日本特有の複雑な表、フローチャート、グラフを含む文書の読解性能が向上した」「オンプレミスで運用可能な規模を保ちながら高精度を実現した」とし、画像トークンを半減しても精度低下を抑える圧縮技術や、個社向けチューニングの有効性も提示。「企業内に眠る暗黙知や非構造化データを資産に変える」社会実装が目前にあると強調しました。
Sansan株式会社
Sansan株式会社は、名刺や請求書などの画像文書をKey-Value形式に構造化する「データ化」を支える文書特化型視覚言語基盤モデル「Cello」を開発。シニアリサーチャー 内田 奏氏は、「判断根拠となる領域を提示することで、他エンジンと連携しやすくし、細字への頑健性向上を狙う」とし、従来モデルの課題だった細かな文字の認識やハルシネーションへの対応を進めています。社内ベンチマークでも性能向上を確認しており、「速やかにデータ化フローに組み込み、ユーザー企業の生産性向上に寄与していきたい」と抱負を述べました。
楽天グループ株式会社
楽天グループ株式会社 平手 勇宇氏は、「より多くの情報を基にした回答を、より少ない計算コストで生成できるモデル」が今後重要になるとし、日本語と日本文化に特化した基盤モデルの開発を進めていることを発表しました。独自の高品質な学習データを整備し、最大200万トークンに対応するロングコンテキスト処理を実現。「ロングコンテキスト対応の汎用モデルでありながら、他の日本語特化モデルと比較しても競争力のある性能を発揮できる」とし、社内実証を通じて将来的には楽天経済圏でのパーソナライズや顧客対応への展開を見据えています。
Direava株式会社
Direava株式会社は、外科手術支援に向けた視覚・言語統合型AI基盤モデルを開発しました。CEO 竹内 優志氏は、外科医減少という課題を踏まえ、「本当に必要なのは『目』だけでなく、『外科医の脳』を支援することです」とその意義を説明します。大学病院での実証では、解剖学的正確性84.7%、臨床的有用性82.9%を達成し、教育面でも学習効果の向上を確認。今後について「まずは教育の場から導入していますが、手術支援などにも応用可能な基盤技術だと考えています」と述べ、日本の外科技術の継承と世界展開への意欲を示しました。
株式会社プレシジョン
「医療現場が過度に人の努力に依存して成り立っている『人手依存医療問題』を解決し、医療の在り方を更新したい」と話すのは、株式会社プレシジョン 代表取締役 佐藤 寿彦氏。医師の長時間労働や、燃え尽きが医療の質にも影響している現状を踏まえ、国産の医療用途特化型LLMの開発意義を説明。今回の取り組みでは、「記録する・調べる・整理する・経営する」の4領域を更新する用途特化型LLMを開発し、「すべての用途特化LLMで目標を達成した」と報告。現在は病院での実証とともに、商品化に向けて安定性と安全性の向上を進めています。
アリヴェクシス株式会社
アリヴェクシス株式会社は、低分子化合物の結合強度を高精度に予測する独自シミュレーション技術「ModBind」と生成AIを統合し、創薬AIの性能向上に取り組みました。取締役 CSO 寺田 央氏は、「学習に必要な化合物構造を自律的に生成・選別し、ModBindで予測しながら追加学習を回すことで、モデル自身が性能を高めていく仕組みを構築した」と説明します。予測性能が低い既存モデルでも改善が確認され、「より多くの医薬品候補を、より早く患者さんのもとへ届けたい」と今後の展望を述べました。
SyntheticGestalt株式会社
SyntheticGestalt株式会社は、分子間相互作用の基盤モデルと分子生成モデルを組み合わせ、標的タンパク質のポケット構造と相互作用を条件にリガンド分子を生成する手法を報告。CTO 神谷幸太郎は「新しい薬の種となる、多様で新規なバインダーの生成を目指した」とし、性能目標として多様性、新規性、親和性の3項目を設定。「ケミストが監修する現実的な評価設定の下、性能目標は全項目で達成した」と述べ、多様性91.4%、新規性41.2%、成功率80.0%を示しました。さらに、農薬やバイオマテリアルへの展開にも言及しました。
株式会社AIdeaLab
株式会社AIdeaLabは、時空間のMoE(Mixture of Experts)を用いた動画生成AI基盤モデルと、アニメに特化した生成プラットフォーム「AnimeGen」を開発。代表取締役 冨平 準喜氏は「日本で唯一、動画生成をフルスクラッチでモデル開発している」と述べ、国産動画生成AIの不足とアニメ業界の長時間労働という課題に向き合っています。公開したプラットフォームは1,500名以上が利用し、9,000本以上の動画を生成。アニメの「中割り」の自動生成などを通じて、制作現場の負担軽減と広告分野への展開に意欲を示しました。
カラクリ株式会社
カラクリ株式会社 取締役 CPO 中山 智文氏は、「直感的な指示でコンピュータを自律的に操作し、カスタマーサポート業務を代行するAIエージェントアプリケーション」に言及。人に教えるために収録した動画をアップロードするだけで、業務の自動化が行える利便性を紹介。実証実験のパートナーである株式会社TENTIAL谷合氏も登壇し、問い合わせ振り分け業務で「15分程度の作業で年間200時間程度」の削減効果を確認しました。今後については、「モデルを軽量化し、安全性対策を施すことで、より広い範囲で使用可能なCUAアプリを構築し、サービス化を進める」としています。
AI inside株式会社
AI inside株式会社は、個別のツールを直接操作するのではなく、「『Buddy』を介して必要な操作を行う時代」への移行を見据え、会話だけでPC上の業務を実行する小型マルチモーダルAIの開発に取り組みました。執行役員 CTO 井上 拓真氏は、日本語の継続事前学習に加え、1%の追加パラメータで画像理解や全二重対話を実装し、「人は声で指示し、画像を見せ、必要に応じて少し補足するだけ」で帳票設定業務の工数を96%削減したと報告しました。今後は、3月にリリースしたAIパートナー「Mee+」への導入を進めていくとしました。
NABLAS株式会社
NABLAS株式会社は、生成AI時代に広がる偽・誤情報への対策として、ファクトチェックに特化したAIエージェントを開発しました。取締役 鈴木 都生氏は、「生成AI時代に全業界・万人が抱えるフェイク・信頼性の問題に立ち向かう」技術として報道現場で検証を進め、ChatGPTやGeminiなどの汎用モデルを上回る精度を達成したと言います。実証では、報道機関の専門家との回答一致率約9割、作業時間は約45〜60分から約10〜15分へと短縮され、「AIが広範なリサーチを行い、人間が最終的な文脈判断と倫理的チェックを行う」運用の有効性を示しました。
インフィニマインド株式会社
インフィニマインド株式会社は、長尺映像を理解できる国産大規模映像基盤モデルの開発に取り組みました。共同創業者 柳田 啓氏は、「映像解析も単に『何が映っているか』を認識するだけでなく、『なぜそれが起きているのか』を推論できる段階へ進められないかと考えました」と説明。長尺映像理解の国際ベンチマーク「LVBench」でGemini 3 ProやGPT-5.2に匹敵する性能を示したほか、放送前コンテンツチェックや店内カメラの購買行動分析にも着手しており、「映像・音声・テキストを統合して理解できる段階まで来ていること自体が、大きな成果です」と今後の社会実装に意欲を示しました。
株式会社Kotoba Technologies Japan
株式会社Kotoba Technologies Japanは、GENIAC第3期で音声基盤モデルの実用化を進めました。日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語を基盤に学習データを200万時間まで拡大し、同時通訳、TTS(Text-to-Speech:音声合成)、ASR(Automatic Speech Recognition:音声認識)に特化した学習を実施。自社の「同時通訳」アプリでも11万分超の実証を重ねました。共同創業者でCEO 小島 熙之氏は、「デモで終わらせるのではなく、実際に使えるものをつくることを重視しました」と振り返り、「今年中に主要言語では、少なくともビジネス領域で言語の壁がなくなります」と展望を語りました。
株式会社NexaScience
株式会社NexaScienceは、膨大なAIエージェントを現場で使い分ける難しさに対し、「すべてのAIを使いこなすAI」という構想を掲げています。GENIAC第3期では、複数のAIエージェントを接続した際の調整を担う「AIエージェントアダプター」を開発し、論文要約や音声要約スコアの向上を確認しました。モデルの最適化とエージェントアダプターにより、評価指標のROUGE-1で29.9%の向上を達成。代表取締役 CEO 牛久 祥孝氏は、研究自動化システム「AIRAS」でも有効性を検証し、「オーケストレーションAI全体を最適化できる技術に育てていきたい」と展望を語りました。
Airion株式会社
Airion株式会社は、人手不足が深刻化するPLC(Programmable Logic Controller)制御設計の現場に向け、ラダープログラム生成に特化した大規模言語モデルを開発。CTO 大熊 拓海氏は「一般的なLLMはWeb由来の学習データが中心で、ラダーのような特殊言語には十分対応できません」という問題意識から取り組みを開始したと語ります。現場実装のラダープログラムに基づく評価用データセットにおいてpass@1で23.2%、pass@10で49.0%の精度を達成し、実証ではプログラム作成工数の平均2割削減も確認されました。今後は「設備メーカー向け専用開発システム」「クラウド型支援サービス」「PLCエディタへのCopilot機能」としての展開を見込んでいます。
ストックマーク株式会社
ストックマーク株式会社は、製造業に蓄積された設計図、仕様書、実験レポートなどの高情報密度文書を対象に、「暗黙知の抽出を目指した業界特化のドキュメント読解基盤モデル」を開発しました。シニアリサーチャー 森長 誠氏は、「属人化した設計ナレッジの活用」「複数文書にまたがる技術情報の整理」を可能にする基盤として、約300億パラメータ規模の製造業向けマルチモーダルモデルを構築したと説明しました。さらに、「『最大性能』ではなく『実装可能性』を重視」し、企業内で運用しやすい中規模モデルとすることで、セキュアな環境での展開や継続的な個社最適化にも対応できる点を強調しました。
株式会社Preferred Networks
株式会社Preferred Networksは、GENIAC第3期で「自律稼働デバイスへのAI搭載に向け、エッジデバイス上で高精度かつ軽量に動作するVLM(Vision-Language Model)の実現」を掲げ、PLaMo 2.1-8B-VLを開発しました。代表取締役社長 岡野原 大輔氏は、「VQA(Visual Question Answering)/Visual GroundingのベンチマークでQwen3-VL-8Bを大きく上回り、同クラスでグローバルに見ても強いモデルになった」と報告しました。社会実装に向けた事例として、工場内の作業者タスク分析や、ドローン映像から切り出した画像を用いた異常検出でも有効性を実証しています。
データ・生成AI利活用実証事業 第1公募採択事業者の成果報告
次に、データ・生成AI利活用実証事業 第1公募の採択事業者3社が達成した成果について発表しました。
<データ・生成AI利活用実証事業者 第1公募>
株式会社オー・エル・エム・デジタル
株式会社オー・エル・エム・デジタルは、アニメ制作を「産業アニメ」と捉え、生成AIを現場の工程にどのように組み込めるかを検証しました。取締役 四倉 達夫氏は、AIを「“ツール”であり“サポーター”」と位置づけた上で、「ツール開発そのものをゴールとするのではなく、アニメ制作のワークフローになじむ生成AI技術の構築を目指す」と説明。成果として、検索・監修システムの商用化や、仕上げ支援における平均3〜5割の効率向上が進んでいます。一方で、「プロフェッショナルが求めるのは100%完璧なもの」であり、「修正(ディレクション)に対応できなければならない」とも述べ、今後も創造性と技術の両立に向けた取り組みを継続するとしました。
セーフィー株式会社
セーフィー株式会社 執行役員 植松 裕美氏は、クラウドカメラで蓄積される映像資産を生かし、「データ利用を簡単に、AI開発・再学習を簡単に、ビジネスを実現しやすくする」MLOps(Machine Learning Operations)基盤「Safie AI Studio」を構築したと報告しました。建設業界2社、介護業界1社での実証では、「複数のプロセスで工数やコストの削減効果が確認され、有効性が検証された」と説明します。今後は、「多様なAI開発者との共創を通じて、様々な業界が抱える現場課題の解決を目指す」として、生成AIとの連携や業界別ソリューションへの対応を進める方針です。
ソフトバンク株式会社/株式会社マクロミル/Valright Advisory
ソフトバンク株式会社は、複数社によるコンソーシアム体制の下、国内最大級の権利処理済み日本語データセットを1年かけて構築しました。次世代技術開発本部 連携推進統括部
統括部長 福地 健之氏は、その意義について「国内最大級の、権利処理がクリアされた日本語データセットの構築に、この1年間で成功しました」と説明しています。参加者は3万人超、コールデータは7万回超にのぼり、テキスト・音声・映像を含むマルチモーダルな構成とした点が特徴です。さらに、雑談も含めた多様な対話データにより、ストックマークやKotoba Technologies Japanから性能向上の評価を得ました。今後については、「事業化に向けた準備を進めている段階です」とし、社会実装を見据えた展開を進めています。
【第1部】 データ・生成AI利活用実証事業 第3公募採択事業者による成果報告
続いて、データ・生成AI利活用実証 第3公募へ新たに採択された3事業者が取り組みの概要を説明しました。
<データ・生成AI利活用実証事業者 第3公募>
note株式会社
note株式会社は、出版社や報道機関、学術機関などが持つ高品質な書籍・記事・論文を、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を通じて安全に利用できる基盤の構築を進めています。大島 航氏は、「高品質な日本語データがAI開発に利用されないという構造的課題が存在する」と指摘し、その解決策として、データを学習用に取り込まず外部参照するRAGの有効性を説明しました。利用実績に応じた対価還元や出典明示、情報提供の停止・更新への対応によって、「許諾された高品質コンテンツを公正な形で利用できる」とし、持続可能なユースケースの創出と社会実装を目指す考えを示しました。
株式会社ティアフォー
株式会社ティアフォーは、人口減少に伴うバス・トラック運転手の不足を背景に、自動運転の社会実装を支えるAIデータ基盤の構築に取り組んでいます。中西氏は、「必要なデータを業界全体で共用できる仕組みを整える」「単なる量の追求から、構築速度と質の両立を追求する考え方へシフトする」と説明しました。さらに、「自動運転のモデル開発に資するデータセットを公開し、日本の自動車業界全体の開発スピードと品質を向上させる」と述べ、オープンデータを軸とした産業全体の底上げを見据えています。
SyntheticGestalt株式会社
SyntheticGestalt株式会社は、分子間相互作用の基盤モデルと分子生成モデルを組み合わせ、標的タンパク質のポケット構造と相互作用を条件にリガンド分子を生成する手法を報告。CEO 島田 幸輝氏は「新しい薬の種となる、多様で新規なバインダーの生成を目指した」とし、性能目標として多様性、新規性、ドッキングスコア向上の3項目を設定。「ケミストが監修する現実的な評価設定の下、性能目標は全項目で達成した」と述べ、多様性91.4%、新規性41.2%、成功率80.0%を示しました。さらに、農薬、化粧品、バイオマテリアルへの展開にも言及しました。
成果報告会第1部終了の挨拶
成果報告会の第1部終了にあたり、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)AI・ロボット部 部長 高田 和幸氏は、GENIACの歩みを振り返りながら、第1期では「日本でもとにかく基盤モデルをつくってみよう」と挑戦を始め、第2期で業界特化型モデルへ、第3期でユーザーと連携したPoC(Proof of Concept)へと発展してきたと述べました。
さらに、「本当に社会実装に向けてこれが使えるんだということを一緒になって示していく」と語り、成果の社会実装に強い期待を示しました。約1,000名規模に広がった開発コミュニティについても触れ、「日本発のAI開発環境をここから新たに、共につくっていく競争のエコシステム」ができつつあると強調。その上で、今後はフィジカルAIや製造業データ整備、海外展開支援も含めて取り組みを広げ、「GENIACを核として日本発の生成AI」が産業競争力強化の出発点になることに期待を寄せました。
[第2部]GENIAC成果報告会の表彰式で参加事業者と個人に5つのGENIAC賞が贈られる
第2部では、今回の成果への貢献をたたえる表彰式が行われました。コミュニティ賞は参加事業者による事前投票で、その他4つの賞は当日の投票によって選出され、各受賞者に賞状が授与されました。ここでは、各受賞者のコメントを紹介します。
GENIACモデル賞:株式会社Preferred Networks
「GENIAC第1期とは異なる新しいチームで取り組んでいましたが、モデル開発にあたっては、いち早くユーザーに試してもらいながらフィードバックを反映して進めていった結果、このような良いモデルができたのかなと思っています。社会実装するところまでが私たちの責任だと思っておりますので、これからも開発と実装を進めていきたいと思います」(岡野原 大輔氏)
GENIACライジングスター賞:ONESTRUCTION株式会社
「まさかこのような賞をいただけるとは思っていませんでした。ここまで来るのに、ハードシングスもありましたが、チーム一体となってやりきれたことを非常にうれしく思っております。我々の本社は鳥取にありますが、世界で使われるAIを目指して、引き続き鳥取から世界を目指していきたいと思います」(日高 洸陽氏)
GENIAC社会実装賞:Turing株式会社
「GENIACは、生成AI基盤を日本の国内産業に展開していく事業だと理解しておりますので、社会実装の賞をいただけたことを大変光栄に思っております。我々はGENIACの第1期から第3期まで一貫して自動運転に取り組み、今回、自動運転の社会実装につなげることができました。今後は国内の自動車メーカーやサプライヤーを中心に、一般の人につながっていくようなプロダクトを目指します」(山口 祐氏)
GENIACプレゼン賞:株式会社Kotoba Technologies Japan
「3回連続でこの賞をいただき、非常にうれしく思っています。我々のフィロソフィーとして、生成AIは一番わかりやすい技術が良いものだと考えて、ずっと取り組んできましたが、まだわかりやすくできるのだなと思いました。今後も引き続き進めていきたいと思います」(小島 熙之氏)
GENIACコミュニティ賞(個人部門):株式会社AIdeaLab 尾崎 安範氏
「やはりGENIACというのは、コミュニティを盛り上げて様々な社会実装を続けていくことが大切だと思うので、いろいろな場で発言したり、コミュニケーションしたりすることが鍵かなと思います。約1,000人のコミュニティがありますので、些細な質問でも気にせず投稿してもらえればと思います」(尾崎 安範氏)
GENIACコミュニティ賞(事業者部門):株式会社ABEJA
「GENIACは支援をいただく事業という側面もあるのですが、それが成立するためにはコミュニティが大事であり、そのコミュニティも与えられたものではなく、共につくっていくものだと思っております。今後も情報を提供していきますし、皆さんにも一緒にコミュニティを盛り上げていただければと思います」(服部 響氏)
GENIAC 基盤モデル開発事業第3期/データ・生成AI利活用実証事業第1公募の成果報告会は、滞りなく幕を閉じました。開発・実証とともに社会実装を推し進めるGENIACの今後の活動に、引き続きご注目ください。
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